蛍観察の前に里山を散策

里山の自然体験は
大和川を知る第一歩
〜源流地に舞う蛍を観察〜
2008年7月5日放送

奈良県桜井市三谷(みたに)にある「山野草の里」は、人々が離れて荒れてしまった里山の風景を、ボランティアの皆さんが力を合わせて少しずつ元に戻しつつある地域です。大和川本流の源流となっている流れがいくつもあるため、このような整備が下流の水を奇麗にしているとも言えます。今回は、ここで6月28日に開催された「里の初夏と蛍の夕べ〜里山自然体験in山野草の里」に参加しました。

里山がにぎやかになる日


ユウスゲの花

 150人ほどの参加者は、里山散策などをして蛍観察が始まるのを待っています。散策路にはユウスゲの自生地があり、夕方4時ごろから咲く黄色い花が見られました。1日しか咲かない、かれんな花でした。 

  まずお話を伺ったのは、「NPO法人山野草の里づくりの会」の福岡定晃(さだてる)理事長です。

福岡 この地区は一時、農業従事者が減っていく中で、農薬の使用がきつくなったことや、ヘイケボタルのすみかである水田が造られなくなったことで、蛍が相当減りました。

 今日は150人ほどが期待して待っています。
福岡 多い年には300人とか来ますが、この時期は雨が左右します。県内の方がほとんどですが、大阪の方もおられます。公共交通がなくなり、今年は初めてチャーターバスを走らせたところ、今まで来ていただけなかった方にも、たくさん来ていただけました。

 散策の前にビオトープ観察が行われました。昨年、子供たちが造った池のようなビオトープには、既にいろんな生き物がすみついています。
福岡 驚きますね。造って2か月ほどすると、かなりの虫が集まってくるんですよ。今でしたたら、ミズカマキリ、クロゲンゴロウ、コオイムシなど、色々なものが集まります。カエルも卵を産みに来ます。子供たちも、池を掘りながら先に造った池をのぞきに行っていました。そしたらいるんですね。それが楽しみで。横の川にはサワガニとかもいますし。

 里山らしく、作物もたくさん作っています。
福岡 荒れた農地を利用し、赤い花のソバを6年ほど前から植えています。原種がヒマラヤに自生し、暑さを嫌う品種です。日本向けに改良され、北海道などではたくさん作っていますが、関西ではかなり珍しいようです。この辺は標高が400〜500mありますので、条件があってるというか。また、菜の花も毎年作り、菜種油を利用して、イベントで天ぷらを食べてもらったりしています。

 10年近くになる里山復活の活動は、順調でしょうか。
福岡 皆さん、全くのボランティアとして、交通費も自分で払って来てくれます。退職後の方が多く、色々な事情で来られなくなったりもしますが、代わりの方に来ていただくなど、不思議と継続できています。新しく「シニア自然大学」による山野草の調査と保護に取り組む34名のグループも出来、月に2〜3回、活動しています。スズランをはじめ絶滅危惧種が8種類、希少種が20種近くあり、それを主体に調査し、必要な管理作業を始めています。

 

 知識のない人でも、ここでボランティア活動ができるのでしょうか。
福岡 全然条件はありませんし、ハードな作業ばかりでもありませんから、心配せずに来ていただければと思います。来られた方から教えられることも結構あるし、いい交流になります。



蛍が訴える川の大切さ

 日が暮れ、蛍の観察会が始まりました。手作りの竹灯ろうに火が灯され、道しるべのように真っ暗な山道に置かれています。それを頼りに進むと、優しく奇麗な蛍の光が見えはじめました。親子連れに聞きました。
母親 こんなに見えるとは思わなかったので、夢みたいな感じです。昨年も来たかったんですけど、妊婦だったので断念しました。蛍を見るのは始めてです。
女児 奇麗!

 堺から来た女性にも伺いました。蛍がすごい数です。
女性 何十年ぶりに見ました。子供のころは追いかけていたんですけど。

 この辺りには大和川の源流が流れています。
女性 そうみたいですね。大和川って堺の汚い川というイメージですが、こういうところから始まっているのだから奇麗にしていかなければと思います。私も子供のころは鳥取の川で泳いだりしたので、田舎に帰ったような気がします。一人一人が心掛けて、日本独特のこういう良い所を残して欲しいなあと思います。

 

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お話を伺った福岡さん

少し天気が心配でしたが、実にたくさんの蛍が目の前で舞っていました。参加者の皆さんも、思わず歓声を上げて大興奮。最近では、蛍は珍しいものというイメージがあるのですが、昔みたいに当たり前のように川のそばで見られるようになってほしい。そして、美しい大和川を感じたい。そう思いました。