粟原川

ごみの川から蛍の川へ
地道な活動が続く粟原(おばら)川
〜 「桜井市大和川上流を美しくする会」の活動 〜
2008年3月15日放送

奈良県桜井市。桜井駅の北を流れる粟原(おばら)川は、桜井市内で寺川に注ぎ、その寺川は川西町で大和川に合流します。葉野橋が架かる辺りは川幅が約10m。水はとても奇麗で、両堤防上には春に美しく花を咲かせる桜並木があります。そんな粟原川には、ごみがほとんど落ちていません。「桜井市大和川上流を美しくする会」が、20年以上も清掃活動をしているからです。会長の新谷壽男さんにお聞きしました。

少しずつ広がった清掃の輪

 清掃活動は、どのように始まったのでしょうか。
新谷 昭和60年代のはじめごろ、桜井の青年団活動で夜回りをすると、観光客が「山の辺の道」に行く時に必ず通る桜井駅北口辺りの河川に、ごみが多くて気になりました。空き缶やビニール類の他、自転車や単車、冷蔵庫や電子レンジなど、不用品が投げ捨てられていたのです。そこで、地域貢献活動の一つとして清掃を始めました。15〜20人でローテーションを組み、仕事前の早朝に1週間続けてするなどしました。

 地域住民の反応は、どうだったのでしょう。
新谷 当初は気付かれにくかったんですが、やがて年配の方を中心に声をかけていただけるようになり、それが励みになりました。やがて、地域の方や各種団体にもお願いをすることにし、清掃の輪を広げていきました。ただ、年配の方や子供さんにも参加していただいたため、けがが心配で、危険な清掃活動については若い者たちで行いました。

 現在は、いつ清掃活動をしているのでしょうか。
新谷 大きな活動としては、年に1度、河川愛護月間の7月、夏休みに入った1週目の早朝にしています。地域の方や各種団体に参加していただき、寺川と粟原川との合流地点からJR桜井線の鉄橋下までの約1kmを、700〜800人ぐらいで清掃しています。

 コイの放流も行われていたようです
新谷 以前、地元の業者さんが稚魚を選別した時に2〜3万匹頂き、放流していました。鳥に食べられたりしながらも、地元の方が餌やりやコイの状態の監視をしてくださっています。ここ数年は放流していません。

 色々な団体に声を掛けつづけてきたものの、最近は難しい点もあるようです。
新谷 最近は環境問題というくくりで取り上げられ、みんなの頭がそちらに向いているので、身近なごみ拾いという響きではインパクトが弱くなっています。ごみ拾いをし、自分たちもごみをほかさないということが、まずは肝心だと思うのですが。


清掃活動が実り
今はとても美しい粟原川

子供たちが遊ぶ大和川に

 新谷さんは、啓発活動にも力を注いでいるとのこと。
新谷 毎年10月に開催される「桜井市環境フェア」に実行委員として参加し、普段の活動を紹介するパネル展示を行っています。また、桜井市と環境フェア実行委員会が協力し、市内の小中学生を対象に絵、ポスター、作文を公募し、優秀な絵とポスターを掲載した卓上サイズの「環境カレンダー」を作成しております。

 大和川には、どんな思い出があるのでしょうか。
新谷 じゃこ取りなどの川遊びが、小さいころの思い出です。夏場は常に川遊び。怒られましたが、たまに泳いだりもしました。プールがなくて川を使っていた小学校もあり、みんな川での思い出は多いはずです。昔はもっと水量多くて深いから危険という面がありましたが、今は水質や不法投棄による危険があります。

 粟原川は、どれぐらい奇麗になったのでしょう。
新谷 かなり美しくなってきたと思います。うれしいことに、2〜3年前から蛍が見られるようになりました。もう少し上流には、本当に多くの蛍が飛んでいます。目標は高いんですが、皆さんの協力を得ながらアユが泳げる川にしたい。昔のように、子供たちがひざまで浸かってじゃこ取りなどをするほほえましい光景が、将来像として思い浮かびます。

 最後に、皆さんに呼びかけていただきました。
新谷 生活排水を減らし、ごみの投棄を絶対にしないでほしい。そして、ごみ等の環境問題にもう一度地域ぐるみ、学校ぐるみで取り組んでもらいたい。大和川市民ネットワークには「大和川の日」を早く決めていだき、その日に奈良県と大阪府で一斉に清掃活動をすれば、大きなニュースになって、周辺住民にも色々な意識づけができると思います。なお、これまで数十年間、「よみがえれ、万葉のせせらぎ」をキャッチフレーズに活動してきた中で、地域の方や各団体などには、ボランティア精神で活動を支えていただきました。ここでお礼申し上げるとともに、今後の活動にも、ご理解とご協力をお願いしたいと思います。

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新谷さんと

新谷さんは、インタビュー中に何度も地元の方から声を掛けられていました。それだけ熱心に活動している有名人なのだと感じました。大和川には、いろんな所で頑張っている人がたくさんいます。今回は、そういう人たちに任せるだけではなく、自分にもできることを実行していこうと改めて思いました。