菰川にEMを投入する様子
写真提供:菰川を美しくする会

微生物の力で水を奇麗に
EMを使った菰川の取り組み
〜「菰川を美しくする会」の活動
2008年1月19日放送

奈良市を流れる菰(こも)川は、上流の鴻ノ池から2kmほど地下を流れ、法華寺町から地上河川となって八条町で佐保川に合流しています。住宅街の法華寺町では、以前、生活排水で汚れた菰川の臭いがとても気になったそうですが、今ではほとんど感じられません。どうやら、NPOメンバーの協力の下、地域住民による「菰川を美しくする会」の行ってきた地道な努力が、功を奏してきたようです。

すぐに現れたEMの効果

 菰川のほとりで、「菰川を美しくする会」の河井しず代さんと、EMによる菰川の水質浄化を指導されている「NPO法人地球環境共生ネットワーク・奈良」の後藤和子さんに、お話を伺いました。
河井 会の代表である金野自治会長が奈良市議をしていて、菰川の臭いをなんとかしたいと考え、新聞で知ったEMによる水質浄化が実際に行われている各地に出掛けました。そこで、奈良で活動している後藤さんの存在を教えられ、2004年8月に奈良県下水道課職員と後藤さんを訪ねたのが活動の始まりです。以後、月に1回、EM団子を作って川に流したり、EM米のとぎ汁を川に流したりしています。


菰川(法華寺地区)
写真提供:菰川を美しくする会

 以前の菰川は、どんな状態だったのでしょう。
河井 川面の浮遊物や臭いがものすごく、窓が開けられないという住民の苦情がありました。EMを使うと、1年目で浮遊物が減って悪臭が気にならなくなり、去年は、夏でも窓が開けられて臭いが減ったと住民の方に喜んでいただきました。

 後藤さんは、地域を越えて協力されています。
後藤 熱意に感動して引き受けました。勉強会は、EMとは何ぞやという話や、原液から糖蜜を餌に使って増やしていく方法、使い方など、初歩から始めさせていただきましたが、生活上の全てに使えるため、やればやるほど面白みがあり、色々な発見がありますので、勉強が尽きることはないと思いますね。

 そんなEMの基本について、教えていただきました。
後藤 EMとは、有用微生物群のことで、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌を主体に、80数種類以上の微生物を培養したものです。今、国内では500ぐらいの自治体が採用、世界でも約140カ国が採用しています。タイでは王様の指示の下に動いています。(菌と言っても)害はなく、この前も東大寺へ浄化活動に行ったら、じょうろに入れたEMをシカがなめに来たほどでした。原液は日本全国の販売店で買え、また、大手のホームセンターでも置いているところがあります。

 

下流でのアユ産卵が刺激に

 EM団子の現物を見せていただきました。おにぎりぐらいの大きさで、軽石のような軽さです。
後藤 私よりもずっと前から使っている方が、日本各地に大勢いらっしゃいます。関西では、道頓堀川に10何万個入れています。ヘドロが少なくなり、稚魚がわいてきています。菰川では1m2当たり1〜2個、毎月300 個ぐらい入れています。もっと入れた方がいいんですけど、作るのも大変ですからね。皆さん、本当に一生懸命やってくださっています。

 後藤さんは、同じ大和川水系の布留(ふる)川でも活動されています。多くの皆さんの協力で、大和川の水質がよくなっています。
後藤 アユの稚魚が出たとか、産卵していたとか、素晴らしいことだと思います。上流の奈良側の住民に意識を高めてもらい、毎日の米のとぎ汁をEMで発酵させて流していただいたら、通じている大和川がもっと奇麗になるのではと思います。

 河井さんは、最初にEMのことを知った際、どのように感じられたのでしょう。
河井 EMのことは、恥ずかしながら存じておりませんでしたし、本当にこれで奇麗になるのかな?と思いました。でも、勤め先でEMを使って生ごみをたい肥化した時、普通ならすごいごみの悪臭が甘酸っぱくなり、中で菌が生きていることを実感できました。

 今後のことを伺いました。
河井 もっと上流の方に、EM米のとぎ汁発酵液を流していただくこと。それと、EMぼかしを作って生ごみをたい肥化し、花壇や家庭菜園で活用していただくこと。2010年には平城遷都1300年記念事業がありますが、その時に皆さんに喜んでいただけるような花いっぱいの町づくりをしたいと思っています。ワースト1の大和川でも、アユの産卵が確認されました。菰川や佐保川が奇麗になるのも夢じゃないかなと思っています。皆さんと一緒に、弧川、佐保川、大和川を奇麗な川に戻していきたい。

******


左が河井さん
右が後藤さん

奈良市を流れる菰川を訪ね、「菰川を美しくする会」の方にこれまで知らなかったEMの力を教えられました。自分でも使っていきたいなあと思いましたが、菰川がこのように奇麗になってきているのは、地域の皆さんが、必ず奇麗にするという思いを持ち、真剣に取り組んでいるからだとも感じました。