投網を打つ様子

釣り人たちが魚を採集し
鳥や植物を記録する理由
〜「大和川釣りクラブ」の活動
2008年1月5日放送

2008年最初の放送は、河口からも遠くない堺市堺区からスタート。阪神高速湾岸線と阪堺大橋の間、大和川は強風のせいか高く波立ち、冬の川の色をしています。そんな中で投網を打っているのは、「大和川釣りクラブ」のメンバーです。今年は、3月2日に行われる「大和川・石川クリーン作戦」に向け、大和川のケア活動に取り組んでいる皆さんを訪ねることにしました。今回は、その第一弾です。

大魚も珍魚も取れる大和川

 名刺に「環境ボランティア団体」とある大和川釣りクラブについて、代表の松吉敬一さんに伺いました。
松吉 魚釣りをしながら、環境を考え、釣り場を奇麗にしていこうと、下流から浅香山ぐらいまでの掃除など、色々としています。危ないと言われ子供たちが川に近づかない中、私たちは逆にこんな魚がいるんだと見せたい。昨年7月に浅香山地区で開催された「楽しぃんやさかい大和川〜一日水辺の楽校〜」でも、行政に協力し、大和川にいる魚を23種類ほど展示しました。また、投網に入った魚や釣れたコイなどを、川に造った水路に放流し、子供たちに触れてもらいました。

 元々、魚に詳しい釣り仲間。多くの地点で魚を採集して、改めて感じたこともあったとのこと。
松吉 身近な川でこれだけ多くの魚が、また、去年の最高で125cmものコイが釣れたことに、みんなびっくりしています。珍しい魚としては、定点観測をしているうちのメンバーが、イッセンヨウジウオというタツノオトシゴに似た魚を採集した例があります。

 先程から投網を打っている、定点観測責任者の柴田晋さんにもお聞きしました。
柴田 毎年、変わった魚が戻ってくるので、それを調べています。上流方面へ500〜1000mぐらいの間隔で、合計4ポイント設けて観測しています。中州がある所はその周りに草が生え、根に魚がたくさん隠れていて、その大きさや種類を調べ、記録しています。

 どんな魚がいるのでしょう。
柴田 カワアナゴやイッセンヨウジウオといった非常に珍しい魚が昨年取れたため、大阪市立自然史博物館に寄付しました。日本一汚い川の異名があった大和川も、アユ産卵が報道されるなど、最近はだいぶ水が奇麗になったと感じます。この上流の松原市で、川を横切るようにブロックを何箇所か入れ、その上を水が越える時に酸素が入るようになっているからです。魚には非常にいい状態になっています。

 調査を続ける中で思うところを伺いました。
柴田 昭和27年に大和川の近所に引っ越しましたが、当時は深い所でも底が見えるほど水が奇麗でした。泳いだし、魚の種類も多かった。もっと奇麗になり、魚が戻ってほしい。そして、後の世代の子供らに、魚の種類や水の奇麗さを伝え、もっと興味を持ってもらいたいのです。

大和川の水が飲みたい

 続いて、カメラをぶら下げている、浅香山地区責任者の新田米美さんにお聞きしました。
新田 鳥と植物を記録するために写真を撮っています。鳥や植物のことは何も知りませんでしたが、アマチュア写真家たちに鳥のことや鳥がいる場所を聞いたり、大阪市立長居植物園や図書館で植物について調べたりして、少しずつ覚えています。鳥は99種類いるそうで、冬鳥、夏鳥、旅鳥、留鳥を追っていく感じで記録していますが、気候変動などで来ない鳥がいるため、あと2〜3年はかかると思います。

 今はどんな鳥がいるのでしょう。
新田 今来ている渡り鳥(冬鳥)は少ない。ここらで飛んでいるのは、上から下へドボンと水にはまって魚を取るタカの一種です。また、河口の方にはカンムリツブリがいますので、それが魚を取ってくわえている時の写真なんかを撮っています。

 大和川釣りクラブの今後の活動について伺いました。
松吉 3月の大和川・石川クリーン作戦には、昨年に続いて今年も参加します。願いは、「飲める水に」。今は夢ですが、夢でなくなるように頑張ります。子供たちにも、(奇麗な水を)残してやりたい。
柴田 水を飲みたい。でも、水を奇麗にと、この場所だけで大きい声を上げても無理。大和川は、奈良県の山の方から続いているわけですから。
新田 大和川や支流の流域全体が川の清掃を行い、大雨の時にごみや油などが流入しないよう、美しい町づくりに努力してほしい。ごみかあると、見た目も水自体も悪くなります.

******


左から、柴田さん、
松吉さん、新田さん

大和川を美しくしようと頑張っている「大和川釣りクラブ」の取材をして、釣り人は、川や自然の恵みを肌で感じる時間が長いせいか、環境のことを気に掛けている方がとても多いと感じました。皆さんも大和川にお出かけになって、川や魚や鳥の様子をご覧になり、その恵みを感じてみてはいかがでしょうか。