曽我川
右下の写真は
荻原教諭、隠地教頭、北川教諭

魚を追ってみんな生き生き
曽我川を教室にした独自教科
〜御所市立葛中学校の場合〜
2007年12月15日放送

奈良県御所市古瀬(こせ)。大和川支流の曽我川が南から北へと流れ、そこに小さな川である古瀬沢が西から流れ込んでいます。その古瀬沢には、オブジェのように見えるユニークな砂防ダムがあり、周辺には「古瀬沢水辺の楽校」が整備されています。今回は、ここと曽我川で授業を行っている御所市立葛(くず)中学校を訪ねます。独自カリキュラムの「しぜん科」とは、どんな内容なのでしょう。

軽い気持ちで川に入って

 古瀬沢水辺の楽校から南東方向へ数百m。曽我川沿いに校庭が広がる葛中学校で、隠地保彦教頭と北川健(たけし)、荻原賢両教諭にお話を伺いました。
隠地 校区の人口が少なく、当校は1小学校からしか生徒が来ないため、小中一貫教育特区の申請をし、どこの学校にもない「しぜん科」を設けることを条件に、平成16年に内閣府から許可を頂きました。校区の自然を知ることを狙った教科です。

 具体的には、どんなことをしているのでしょう。
北川 通学時に見ている曽我川で、生き物や水質を調べる学習を中心に、実際に川に入って魚を取り、教室や廊下で飼うこともしています。もう一つは、水辺の楽校で土地を借り、畑をしています。

 川で授業をすることになった経緯を伺いました。
北川 当初は環境問題を教室で勉強していましたが、せっかく川が流れ、よい環境にあるので、今の3年生が1年生の時、身近な環境に目をやり触れ合う中で授業が
できたらと思い、軽い気持ちで男子中心に入ってみると、子供たちが生き生きと活動しはじめました。やがて川に興味関心が出てきて、ごみがある様子を見てとるようになったので、川に入ってごみ取りや水質検査なんかもしました。

 水辺の楽校では、農作物づくりです。
北川 土地が遊んでいる状態でしたので、土を入れていただき、耕すことから始めました。サツマイモは近くの小学校の児童と一緒に掘り、児童には持って帰ってもらい、中学では家庭科での調理実習に使ったりしました。大根は、家庭科室の樽で漬物にしています。

 魚は何種類ぐらい把握されているのでしょう。


教室の水槽

荻原 現在、飼育しているのは約24種類で、曽我川では16種類を確認しています。生徒たちは、最初、魚を見るだけたったのですが、普段、格好つけている子が積極的に飼育に加わったり、女子が休み時間にぼっと見ていたりと、結構、癒し効果があるのかなとも思います。水槽の手入れも、少し教えてあげると、自分たちで水草を取ってきて植えるなど、自然環境に近い状態を再現するよう、意欲的にやってくれています。

 川を大切にする気持ちも芽生えてきているようです。
荻原 川に行った時にごみが落ちていると、これ危ないな、これ汚いな、というように、魚を取りながらごみを横によけるなどします。ちょっと関心があるのかなという感じがしますね。

曽我川は「ユートピア」

 生徒たちにも聞きました。3年生の田島大介君、米田和貴君、關(せき)真章君は、しぜん科の授業を受ける前、曽我川に入った経験はあったのでしょうか。
田島 何回もあります。しょっちゅう遊びました。
米田 田島君と一緒に入って魚取ったりしました。
 小学校の時に魚取ろうとしたりしていました。

 曽我川に入った時の思い出も聞きました。
田島 多分、夏やったと思います。今より水質が奇麗で、魚もいっぱいいたと思うんですよ。
米田 初めのころは、魚があんまし取れへんで…こけて、ずぶぬれになった。

 後輩たちに一言。
田島 川は、自然のユートピアです。
米田 楽しいけど、危険な一面もある。
 魚取りもええけど、川掃除もしろよ。

 「しぜん部」に所属している1年生の田仲由尚君、井ノ上武(たける)君にも聞きました。
田仲 魚が好きで入部しました。魚の種類を調べたり、取ってきた魚を飼ったりする活動をしています。最初は、オイカワなど珍しくない魚ばかりが取れました。
井ノ上 以前に一度、曽我川に入ったことがあり、どんな魚がいるのかと思って入部しました。9月ごろは毎回川に入っていましたが、10月は2日に1回ぐらい、11月には、冷たくてほとんど入らなくなりました。

 曽我川や大和川に望むことを聞かせてもらいました。
田仲 ごみの少ない、水の奇麗な川になって欲しい。
井ノ上 由尚と同じです。

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田島君、君、米田君
田仲君、井ノ上君

葛中学校前を流れる曽我川を歩きました。民家や畑が並ぶ中を穏やかに流れる曽我川は、幅が5mぐらいで、そんなに深そうではありませんが、中ではたくさんの魚が泳いでいることでしょう。生徒たちにとって、ここは教室のようなところ。身近な自然を題材にする授業を、みんな楽しんでいるように感じました。