赤いそばの花が咲く山野草の里

赤いそばの花に見守られ
小さな流れが大和川本流となる地
〜 源流地の里山に集う人々 〜
2007年10月20日放送

大和川本流の源流地、奈良県桜井市三谷(みたに)地区の「山野草の里」。珍しい赤いそばの花が一面に広がっていて、これから「自然を楽しむ会・秋〜赤いそばと里の秋〜」が開催されます。しかし、この地区は、少し前まで里山の姿を失いかけていました。それを復活させたのは、今回のイベント主催者である「NPO法人山野草の里づくりの会」です。理事長の福岡定晃さんにお話を伺いました。

荒れた源流地に里山を復活

 地元産の野菜やジャム、花の販売、スケッチ教室やクラフト教室、そば打ちなどが行われている会場で、福岡さんに、まずは赤いそばの花について伺いました。
福岡 ネパールに自生するそばを日本で栽培できるように改良した、高嶺(たかね)ルビーという品種です。これで8分咲きぐらいで、10月いっぱいまでは見てもらえます。広さは約2200uあります。

 「里づくりの会」は、地元やボランティアの方と力を合わせ、里山をよみがえらせる活動をしています。
福岡 ここは昭和30年代まで、農林業中心のかなり奇麗な場所でした。その後、若い人が減り、農地が管理されずに荒れていきました。山野草が消えていく状況をなんとかしたいと思い、活動を始めました。何十年と耕作されていない水田や畑地には、既に木が生えていましたが、皆さんの頑張りにより復旧できてきました。

 どれぐらいの広さがあるのでしょう。
福岡 農地1haと山野草の自生地を1haほど、会で管理しています。毎週、水曜日と土曜日に、登録していただいている大勢のボランティアの内、10人前後が来てくれて活動を行っています。

 「山野草園」には、一般の方も見に来られています。
福岡 団体で予約されて来られる場合は、できるだけ案内もお受けしています。その他の場合も、時間があれば一緒に案内して回らせていただいています。

 このすぐ後ろにあるため池も、復旧させたものだとのこと。
福岡 そこの川は200m上がるとなくなり、わき水になっています。大きな川がないので、ため池を使って農業をしていました。しかし、池は管理が大変で、村に10個ほどあったのが、もう2つしか残っていません。それもゆくゆくは復旧させていきたい。また、この下の水田では、水生昆虫やカエルなどを子供たちと一緒に育てていて、トンボとかも復活してきました。川の上流にいる者の責任として、そうしたものが住める環境を整えていきたいと思っています。


福岡さんと

河口の人が源流で打つそば

 そば打ちをされていた方にもお話を伺いました。
男性 「NPO法人泉北そば打ち普及の会」のメンバーです。8人来て、2時間ほどで150食打ちました。ボランティアでやっています。前身である「泉北そば打ち同好会」の時代からこことつながりがあり、毎年やっています。今年は、蛍の季節に次いで2回目で、この秋のそば打ち会は恒例です。

 腰があって、実の味がするそばでした。そばは水が大切だとのこと。どんな水で打ったのでしょう。
男性 ここの井戸水です。いい水ですよ。そばは混じり気のないものを使っていますから、味が消えないよう、薬味を入れないで食べてほしい。

 高嶺ルビーも、打たれたことがあるそうですが…
男性 やはり原種に近いので、色々な交配をして作った、僕らが食べているそばとの違いはあります。


そば打ちの様子

 会の本部は、大和川河口の堺市にあるとのこと。まさに、上流と下流との交流です。


男性
 昔から、堺と桜井の辺とはつながりがすごく深いんです。堺東から、大和高田を通って桜井へ出てくる長尾街道という道があります。(交流は)いいことやないかなと思うけども、今の大和川は汚いもんな(笑)。ただ、今年の夏に蛍を見にきた時、結構、昔に近い飛び方をしてるなあって、話してたんですよ。

 イベント参加者にも、お話を伺いました。
男性 香芝市から来ました。今年2回目で、こちらで活動はしていないけども、赤いそばの花が奇麗だから見に来ました。大和川は、昔、アユが泳いでいたらしいから、はよ戻ってほしいね。

 大和川本流の源流となる水が、どこから流れているのかを見るため歩いたところ、幅30cmぐらいの川がちょろちょろと、でも、しっかりと流れていました。とても澄んだその水にはカニがいて、周りには草や木が生い茂っています。田んぼや赤いそばの花、少し遠くにある山などが見え、鳥や虫の声が聞こえて、足元ではコオロギも跳ねます。コスモスも奇麗でした。

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赤いそばの花は、初めて見ました。とても可愛らしく、繊細で小さな花でした。風景も素敵でしたが、なにより、こういった里山を、ボランティアの方たちが一生懸命に守っていこうとしている姿が感動的でした。風景を楽しむのもいいのですが、何か自分にも出来ることがあるのではとも感じました。