やまと錦魚園

7千万匹の金魚を育てる
大和川水系の水
〜金魚生産高2位の大和郡山市〜
2007年9月29日放送

奈良県大和郡山市は大和川支流の富雄川と佐保川が流れ、雨の少ない奈良県でも水の豊かな地域です。桜の名所として知られる郡山城跡のお堀は、今でも池として、二つの支流を経て佐保川につながり、日本有数の生産量を誇る金魚を育てているのも富雄川や佐保川の水であるなど、この町と大和川水系との関係は密接です。今回は、ここ大和郡山市から、金魚についての話題をお送りします。

殿様が伝えた最先端の趣味

 近鉄郡山駅から徒歩10分、金魚の養殖、卸売、小売の「やまと錦魚園」には、「郡山金魚資料館」があって無料公開されています。やまと錦魚園代表で郡山金魚資料館の館長、嶋田輝也さんにお話を伺いました。まずは、年間の生産量から。
嶋田 500〜600万匹は出荷しています。江戸の元禄時代から養殖が始まった郡山全体では、全国2位の約7千万匹を出荷、養殖業者は約70軒です。金魚は千年ぐらい前に中国で見つかった赤いフナが元祖と言われ、それが約400年前に堺の港に伝わったものの、戦国時代で金魚どころではなく、日本には定着しませんでした。大和郡山には、柳沢吉里公が甲斐国から来て郡山の殿様になった時、趣味で飼っている金魚を持ってきたと言われています。当時、金魚は江戸文化において、一番トレンディーなお金持ちの趣味やったということです。

 養殖がここまで盛んになった理由は?
嶋田 大和川水系である生駒山の伏流水が、金魚に合っていたとよく言われます。特にこの地域は水に恵まれています。ただ、いつでも金魚があるように思われがちですが、出荷後で全然ない時もあります。そこで、いつ見学に来られても魚がいるようにと、2代目の父が資料館を造りました。日本の金魚のほとんどを展示していて、変わったものでは、青森県の津軽錦、高知県の土佐錦(きん)、島根県の出雲ナンキンなどもいます。また、金魚博士と言われた松井佳一先生が集められたものを基に、金魚に関する書物や金魚が描いてある浮世絵のコピーなどの資料も置いています。

 小さな金魚すくいの金魚から、グレードの高い金魚まで、色々そろっています。値段は、いくらぐらいするのでしょうか。


郡山金魚資料館

嶋田 安い値段のものから置いているけど、一番高くて、50万円ぐらいの金魚が売れる時もあります。常時置いておくのは大変だから、こんなの欲しいって注文聞いてから、用意するんですけどね。

金魚と富雄川と佐保川の関係

 金魚の養殖は、どのような手順でするのでしょう。
嶋田 まず、秋に親選びをします。琉金(りゅうきん)やランチュウなどは形のいいものを、金魚すくいのはできるだけ赤い親を使います。冬に吉野の方から水草を取ってきて、それに採卵した卵を付けます。産卵は4月中旬ごろ始まり、大きな金魚は1回に3千粒ぐらい産んで、9割近くがかえりますが、商品になるのは、琉金で4割、ランチュウだと1割ぐらいです。

 出荷できる金魚の基準などはあるのでしょうか。
嶋田 サイズもある程度決まっていますが、やっぱり色。金魚はみんなフナみたいな色から赤くなっていきますが、色の上がりのいいものから売ります。同じ郡山でも、少し離れた養殖場とこの周辺では、色が違ったりします。植物プランクトンを繁殖させるんですが、土によってその種類が違うのではと思っています。

 どこから水を引いているのでしょう。
嶋田 富雄川やね。高低差があって水の引きが早いから、排水は全部佐保川です。

 大和郡山市では、「全国金魚すくい選手権大会」が毎年行われます。
嶋田 金魚の町で一大イベントをやろうと、業界と大和郡山市が頭を絞って考えました。今、一番困っているのは、すくった金魚を持って帰ってくれないこと。お母さんが、「そんなん持って帰ったら…」って言う。だから、金魚が売れないんです。

 金魚を買う場合のポイントも伺いました。
嶋田 元気に泳ぎ回り、少しふっくらしている金魚がいい。品種を決め、事前に勉強して、その品種の特徴がよく出ているものを買います。人気のピンポンパーやランチュウは、循環ろ過しない方がよく、そうした水槽の器具などもちゃんと調べて、いい環境作ってやらないと。水槽には、金魚の糞などを奇麗にしてくれるバクテリアがいますが、金魚を入れるまでにそのバクテリアを作りたい。水を替える時にも、洗いすぎずに、ある程度バクテリアを残してあげるようにします。


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嶋田さんと

大和郡山市でお話を伺い、身近なのに意外と知らなかった金魚の歴史や、人間との関わりが、とてもよく分かりました。その金魚を育てているのは、大和川の支流である富雄川の水。人間はもちろん、生物というのは、自然から色々なものをもらい、お世話になっているのだなあと感じました。