大和川・柏原水位観測所
(大阪府藤井寺市)

いざという時に役立つ
普段からの河川への関心
〜防災用語と洪水体験談を聞く 〜
2007年7月14日放送

梅雨や台風で洪水が心配な時期となった今回は、水害に関する話題を取り上げます。水害など起きそうもないように見える大和川、実は今も整備の途中で、災害対応できる川になるまでには、まだまだお金も時間もかかるとのこと。それまでは色々な対応で補っていくしかなく、ソフト面での対策も重要。分かりやすい防災用語や洪水ハザードマップなどによる情報提供も、その一つと言えるようです。

知っておきたい水害時の用語

 大阪府藤井寺市には、大和川の水位を測って河川計画や洪水予想、渇水対策などのデータにしている水位観測所があります。その近くで国土交通省大和川河川事務所の川端敬司(たかし)さんに伺いました。堤防整備が完了するまで、どんな対策が必要でしょうか。
川端 情報収集や広報活動などソフト対策が必要です。水害発生時に市町村から避難勧告等が出ていなくても、自ら行動して適切なタイミングで避難していただくために、大和川河川事務所の携帯サイトなどから、河川の状況を知っていただきたい。今日は、その際に役立つ河川の水位を示す言葉をご紹介します。

 どんな言葉が使われるのでしょう。
川端 一番低い水位が「水防団待機水位」です。2番目は「はん濫注意水位」で、5段階の危険度レベルの1にあたり、この情報を得たら、以後、住民の皆さんははん濫に関する情報の収集をお願いします。3番目は「避難判断水位」で、危険度レベル2。4番目が「はん濫危険水位」で、危険度レベル3。この情報を得た時には避難が終わっているよう、住民の皆さんには行動をお願いしたい。そして、最後は危険度レベル5の「はん濫の発生」です。

 こうした言葉は、どこで使われるのですか?
川端 気象庁、流域の自治体、マスコミなどから発信されます。大和川の場合、「大和川はん濫注意情報」や「大和川はん濫警戒情報」、「大和川はん濫危険情報」といった具合に情報発信されます。

 住民としては、普段から洪水時にどうなるかを知っておく必要もありますね。
川端 国土交通省などの河川管理者は、浸水時に水に浸かる範囲や程度を示す「浸水想定区域図」を発表しており、それを基に自治体が避難場所や被害の程度を表した「洪水ハザードマップ」を作ることになります。大和川流域では、大阪府で5市、奈良県で1町が、既に作って配布していますが、他の自治体にも早く作っていただくことを望んでいます。

 

25年前、大和川を襲った大洪水

 今度は、昭和57年に大和川で起きた水害時に、最前線で闘った経験をお持ちの方に伺いました。当時、大和川河川事務所の副所長をされていた、藤原秀雄さんです。まずは雨の状況から。
藤原 7月31日から降雨状況が気になり、自宅から電話で「音声水位計」の情報を聞いていると、8月1日(日)に水位が急上昇したため出勤しました。午後6時ごろから2日午前1時ごろまでと、2日午後11時ごろから3日午前9時ごろまで、2度にわたって1時間に10〜20mmほどの豪雨が続き、この水位までは大丈夫と想定する「計画高水位」も、2度上回りました。

 どのような行動をされましたか?
藤原 1回目の洪水で損傷してた箇所が2回目の雨で拡大すること、長雨や高水位による堤防の強度低下を恐れ、3日の午前4時、建設関係の企業に、人手と土と土のう袋を緊急に用意してもらい、ダンプに何十台と事務所まで持ってきてもらい、土のうを造りをしました。そして、水防団が見つけた水の噴き出ているあちこちの堤防で、「釜段工(かまだんこう)」と呼ばれる水防工法を実施しました。柏原市役所近くにある旧河川の樋門裏でも水が噴いていたため、やはり釜段工で対応しました。

 橋は流されなかったのでしょうか?
藤原 幸いにして流れた橋はありませんでしたが、大和川河川事務所近くの河内橋は、少し上流の柏原堰堤を越えて“ジェット流化”した濁流が橋脚に当たり、揺れていました。よくもったなあと思います。

 防災上、今後、大和川で必要なことは?
藤原 とくに大阪市域の大和川は、洪水時の水位が市街地よりかなり高く、はん濫時には壊滅的な被害が予想されます。十分な投資で、強い堤防の維持保全を行っていく必要があります。また、想定以上の洪水が発生する可能性もあるため、住民の方も普段から河川の情報に関心を持ち、情報を基に早い段階から安全安心な行動を自主的に行うことが重要かと思います。


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川端さん

藤原さん
お話を伺った場所で、そのような洪水があった事実を想像するだけでも鳥肌が立ちました。災害時に情報を正しく理解して行動するためには、普段から川に関心を持って知っておくことが大切です。皆さんも、これを機にお近くの大和川の防災情報について、調べてみてはいかがでしょうか。