下赤阪の棚田

千早川の豊かな清流が
おいしい棚田の米を育てる
〜 「下赤阪の棚田」で田植え体験 〜
2007年6月16日放送

大阪府唯一の村である千早赤阪村には、農林水産省が平成11年に「日本の棚田百選」に認定した「下赤阪の棚田」があります。水を引いているのは、大和川2次支流の千早川。底の小石や砂まではっきり見えるほど、その水は澄んでいます。この水が、美しい下赤阪の棚田でどんな米を育てているのでしょうか。田んぼに水が最も映えるのが田植えの日。今回はその様子をお伝えします。

棚田が最も美しい時期

 空の青と山の緑、鳥のさえずりが気持ちいい中、農家で「下赤阪棚田の会」会長の千福亥太郎さんに、お話を伺いました。
千福 棚田は全部で250枚ぐらい、農家は15軒ぐらい。田植えは、5月末ごろから6月半ばぐらいまで、それぞれが土日を中心に若い人の休みを利用して行います。品種は「祭り晴」とヒノヒカリの2種で、水も空気もよく、段々になっていて棚田全体に日光が当たるため、取れた米がみんなおいしい。

 千早川からは、どのように水を引いているのでしょうか?
千福 道具を使って上げたり下げたりせず、自然の傾斜に沿うて流しています。大昔の人が考えてやったものです。年間を通じて豊かな水量があり、水が澄みきっています。下赤阪の米がおいしい理由の第一は、水やな。

 ここが、日本の棚田百選に選ばれた時の思いは?
千福 初めは何も思わんかったけど。今は、景色もええところやし、ええことやと思っています。常時ではありませんが、「棚田ふるさとファンクラブ」に来ていただいて、サツマイモやコスモスなんかも植えています。会員の方々には、それなりに苦労もあると思いますが、ご協力をいただき、作物も持って帰っていただいています。

 1年の内で、一番素晴らしいしい時期は?
千福 やはり、田植えが終わった時点や、米が色づいた時点は、景色がよく出ます。今だと、山に夕日の沈む時間が非常に奇麗です。

 この棚田の水が、千早川を通って流れ着く大和川の下流も、最近は奇麗になっています。
千福 そりゃあ結構なことやと思います(笑)。汚れた水を流すより気分がいい。


田植えを体験

 田植えを体験させていただけますか?
千福 よろしいですよ。今日は天気がいいんで、水に入った方が気持ちええぐらいや。

都会からのボランティアと
交流をしながら棚田を守る

 今度は、千早赤阪村産業振興課の竹川元偉(もとひで)さんにお話を伺いました。
竹川 下赤阪棚田の会は、日本の棚田百選に選ばれたのを契機に、大阪府の協力をいただきながら、地元農家15軒が結成し、事務局を村の産業振興課が担当しています。活動としては、大阪府土地改良事業団体連合会が作る「棚田ふるさとファンクラブ」の皆さんと交流をしつつ、草刈りをしたり、ジャガイモやサツマイモを植えて収穫したり、コスモス狩りを秋にしたりと、年に6回ほど保全活動や収穫などの農業体験をしています。クラブの方にはボランティアとして参加していただいていて、現在、百数十名が登録。毎回、10数名程度が都会から来られ、楽しんでおられます。農家の皆さんの指導の下、最後には作業も上手になり、喜んで帰っていただいています。

 村としても、工夫を怠っていないようです。
竹川 棚田付近に散策路を造り、ベンチやあずまやも設置して、ゆっくりお弁当でも食べながら下赤阪を楽しんでいただけるようにしました。近くの下赤阪城跡周辺を、史跡公園として整備もしています。また、今後は遊休地が増えてくるので、そういうところでも、皆さんのお力を借りつつ作物が出来たらいいなあと思っております。

 日本の棚田百選になり、何か変わったことは?
竹川 四季を通じて、棚田の景色を撮影する多数のカメラマンや、絵を描きに来られる方が目立ちますね。

 千早川は上流部にマス釣り場もあり、まさに恵みの川。上流を預かる立場として、下流の大和川が奇麗になったことを、どう感じておられるのでしょう。
竹川 山と歴史の村にあって、クリーンキャンペーンを年に数回実施し、ごみを集めて奇麗な環境づくりをしています。水の源泉の地ですから、奇麗に自然を守っていこうとういう機運で、ボランティアも参加してみんなで取り組んでおります。

 

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千福さん(左)と竹川さん

日本の棚田百選の一つ、千早赤阪村にある「下赤阪の棚田」で田植えを体験しました。見ているだけでも心が癒される棚田の風景、そして、思いのほか気持ちのよかった田植え体験に満足しました。この日は、ピクニックを楽しんだり、写真を撮っていたりする方も、結構見かけました。皆さんも、ぜひ自然を満喫しに千早川へお出かけください。