大和川支流・吉城川の
水を引く名園
〜国名勝指定・依水園〜
2007年5月26日放送

奈良県庁の数百m東、東大寺の南側にある「依水園」には、前園(ぜんえん)と後園(こうえん)という二つの庭があり、どちらも吉城(よしき)川から水をひいた池を中心にしています。また、寧楽(ねいらく)美術館やお茶室などの建物があって、この時期は池に水辺の花が咲いています。寧楽美術館の中村記久子館長にお話を伺いました。
前園は、興福寺の子院である摩尼珠院(まにしゅいん)の別業(別荘)があった所に、江戸時代初期の延宝年間奈良の晒業者である清須美道清が建てた別邸の庭です。かや葺の建物は、黄檗山(宇治・萬福寺)の木庵禅師により「三秀亭」と名付けられ、今も食事と抹茶を出しす茶室として使われています。食事のメニューは、「麦めしとろろと」、鰻ととろろめしの「うなとろ御膳」で、珍しい鰻ととろろの組み合わせが外国人客からも人気です。


後園は、明治32年に奈良の富豪・関藤次郎(せき・とうじろう)によって造られました。特徴は、バックの遠くに若草山、春日山、御蓋山、少し手前に東大寺南大門の瓦と参道の並木を景色の一部として取り入れている「借景式」の美しい眺めです。また、奈良屈指の池泉回遊式庭園で、池、小山、清流を導いて、数個の伽藍石や銘木、珍木を配し、昔ながらの「寧楽(なら)の都の面影のとどめています。なお、依水園の名の由来についてはいくつかの説がありますが、吉城川から水を引いているというのも、一つの説として知られています。昭和14年、海運業で財を成した中村家が買い取り、今日の状態に整備し、公開しています。