桜が満開の秋篠川
(2006年4月)
写真提供:秋篠川の源流を愛し育てる会

地域の人々が気付いた
小さな川の貴さ

〜秋篠川源流を愛し育てる会〜
2006年11月11日放送

秋篠宮家新宮様ご誕生の際、秋篠宮様の宮号の由来となった秋篠の里が話題となりました。そこで今回は、奈良市北西部の秋篠川を訪ねます。秋篠川は大和郡山市で佐保川に合流します。大和川の二次支流、つまり“支流の支流”にあたる川の一つです。この秋篠川を町の皆さんが力を合わせ奇麗にしています。「秋篠川源流を愛し育てる会」会長の芦田一彦さん、事務局長の橋本哲夫さんにお話を伺います。


ランニング仲間の夢がかない
川沿いが桜の道になった

 この秋篠川、片側の道に桜並木がずっと続いていて、散歩するのには気持ち良さそうですね。
芦田 私たちが1300mくらいにわたって桜を植えています。現在は約155本。将来に向けて、また植えていきたいなと思っています。

 皆さんの会の活動内容を教えてください。
芦田 私たち発起人は、元々ランニング仲間で、この場所をランニングコースにしていました。「ここに桜の木があったらいいな」と話していたことを、奈良市制百周年の記念事業のアイデアとして応募したところ、採用されたのです。それで平成10年に桜の木を植えました。1.5m程だった木は今、3mを超しています。アイデアの中には桜をみんなで育てるための「桜の里親制度」があり、一本一本の桜の木に里親がいます。事業も夜桜祭りなど、年間通して行っています。

 川の清掃活動もされているそうですね。
芦田 通常は20〜30人ぐらい。中高年の方、子供さんやお孫さんを連れて来られる方などいろいろな年齢の方が来られています。ごみは特に多いのがペットボトルやビニール袋など。単車やタイヤが出たこともありましたが、今はなくなりました。私たちの活動の成果もあると思っています。やはり皆さん、奇麗なところは、奇麗にしていきたいと思うんでしょうね。
橋本 奈良市も協力してくれて、清掃で出たごみを毎回、全部引き取ってくれるので助かっています。
 
 何か賞をもらったことがあると聞いたんですが
橋本 一昨年になりますが、都市緑化基金が行っている「緑の都市賞」で奨励賞を頂きました。全国で認知頂けたかなとうれしく思っています。

  秋篠川以外にも活動が広がっていくのでは?
橋本 奈良市がつくった「グリーンホール」の管理もしています。このホールは公民館のように、団体にお貸ししたり、子供のための「遊びの城」や中高年のための「いきいきライフ塾」、映画会などを行ったりしています。


コンクリートではなく
自然の土手が残る貴重な川

 この秋篠川は両サイドが土手になっていますよね。
橋本 コンクリートで固められたような状態の川が多くなり、秋篠川も下流から段々と同様の形になってきていました。でも、河川法が変わり、環境にも配慮しようということで、上流の土手はそのまま残りました。特別なものはありませんが、いろんな生き物がいて、非常に貴重な自然だと思います。

 行政が草を刈ってくれる時期でも、川の周りは、生き物がすみやすいように少し草を残すそうですね。
橋本 私たちも随時刈っていますが、ホタルなどがすんでいるのが分かっていますので、下のほうは、なるべく残しています。

 子供たちにも、もっと川に興味を持ってもらいたい。そういう活動もされているんですよね。
橋本 この秋篠川の活動と「遊びの城」をドッキングさせて、「川あそび大会」を毎年5月頃にやっています。子供たちは昔も今も一緒で、川に入ると大変楽しそうです。お父さんお母さんも、普段はそういう所にあまり入ったことがないような感じですけど、我々がこうして連れていくと本当に喜んでいます。

 この番組にも何度かご出演頂いている谷幸三先生と一緒に、自然観察会もされたんですね。
橋本 谷先生には、私どもの会の里親の一人にもなって頂いています。子供たちがとってきた生き物の名前を教えるなど、毎年楽しい観察会をしています。

 生活を一緒にしてきた秋篠川はどんな存在ですか?
芦田 会の目的にもあるように、ここを「ふれあい」と「ときめき」と「いこい」の場所にしていきたいです。

橋本 以前は、ほとんどの方が川を意識していなかったように思います。ですが、こうした活動の結果、地域の方にも関心を持って頂き、「ふれあい」のきっかけにもなったことは非常に良かったです。また、大阪府での大和川の水質の責任は、上流の奈良県にもあると思うので、奇麗にしていきたいと思っています。


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芦田さん(左)と
橋本さん

100m間隔で置かれた距離を示すための陶板も、里親の会員の方が作られたそうです。「秋篠川源流を愛し育てる会」では、毎年4月に夜桜祭りを開催しています。この桜並木に灯火をずらりと並べるそうです。ロウソクの灯りに照らされる夜桜、幻想的な風景が広がるんでしょうね。春が楽しみになります。