塚原さんと志紀長吉神社にて

 2011年1月22日(土)、平野区でのまち歩きツアー「大坂夏の陣〜決戦前日 幸村、家康の足跡をたずねて〜」が行われます。このツアーは、当番組に登場した皆さんや大阪市コミュニティ協会、ラジオ大阪が一緒に進めている「大阪ひと・まち魅力発見事業推進会議」の主催で行われるもので、今、その参加者を募集中です。今回は、ツアーでガイドを務める「平野いろいろ案内人」の塚原剛さんにお願いをし、実際のコースを先取りして歩かせていただくことにしました。
 取材は
地下鉄谷町線の長原駅近くにある志紀長吉神社からスタート。大坂夏の陣で大阪城が炎上する前日の1615年5月6日、豊臣方は「道明寺・譽田(こんだ)の戦い」や「八尾・若江の戦い」などで徳川方を迎撃し、知将・真田幸村は道明寺から大阪に引き上げる際、境内すぐ近くにある神社の馬場で休憩をしました(真田幸村休憩所跡)。通った道は、平野郷へとつながる道(江戸中期以降は古市道と呼ばれていた道)で、当時の東除川の東側沿いを通っていたようです。幸村はその時、戦勝を祈願して「永楽通宝」の六文銭を旗印にした旗と刀をこの神社に奉納。刀は焼けて残っていませんが、旗は今も保存され、お正月などに一般公開されているそうです。

右が常磐会短期大 左が常磐会学園大
中央を抜ける道が平等堤

 長吉から平野郷方面に北上して平野区喜連東(きれひがし)に。府道186号沿いに常磐会短期大学と常磐会学園大学があります。その内、短大の敷地は40年ほど前まで「辰巳池」という池でした。辰巳とは平野郷から見て辰巳の方向にあることを意味し、池の水は平野郷のかんがい用水として利用されていたそうです。大坂夏の陣では、幸村軍が家康本陣を急襲。家康は3里逃げてこの池に生えていたアシ群に隠れましたが、そのアシは葉っぱが一方向に向いていたため人が入っても向きが変わらず、家康が隠れているものと思わずに幸村軍は去っていった。そんな「片葉(かたは)の葦」の言い伝えが残っているそうです。
 他方、常磐会学園大は以前、喜連北池という池でした。こちらについては、喜連村史の会(2009年4月11日放送分で紹介)の橋本克己さんにお聞きしました。橋本さんによると、学園大および隣接する団地のところはすべて池で、1599年に村人たちの力で完成したものだそうです。喜連東は少し高台になっていて、ここから西の喜連村に向かって水を流してかんがい用水として利用していたそうです。
 なお、間を抜ける道はかつて平等堤と呼ばれる堤防だった道で、渡来人の土木技術によって造られたというお話も、塚原さんから伺いました。

田畑口地蔵

 平野郷に入り、田畑口地蔵へ。周りを壕で囲って町を守っていた平野郷は、13の入り口を設けていました。そこにはお地蔵さんが祭られていて、ここはその一つ。平野郷は大阪平野の中央に位置するため、多くの道が集中していました。道明寺から大坂城の真田丸に戻る場合、幸村もいったん平野郷に入らなければならず、その際に通ったのがこの田畑口だと思われます。
 一方、奈良方面から攻めてきている家康軍は、平野郷の東に開ける樋ノ尻口から入ってくると幸村は予測したはず、と塚原さん。幸村は、ここから少し離れた樋ノ尻口まで行き、いつになるかは分からないがやってくるはずの徳川軍に対し、地雷を仕掛けてから大坂城へと退却していったのだそうです。

樋ノ尻口地蔵

 樋ノ尻口地蔵に移動。お地蔵さんを見て、そのすぐ近くにある「coffee houseアート(平野東2)」へ。このお店は、平野郷の歴史や樋ノ尻口地蔵のことを皆さんに知ってもらうため、絵葉書を出すなどの取り組みをしています。そんなお店で取材班を出迎えてくれたのは、2007年に40歳の若さで急逝した地元出身の女性講談師、 旭堂南楓(なんぷう)さんのお母さん、森本かづ子さんでした。南楓さんは、大卒後、10年間ほど古典の先生をしていましたが、東京で神田一門の講談に触れて感動し、1年弱ほど講談塾で勉強した後、教師を辞めて旭堂南陵さんの下へと弟子入りしてプロになりました。南楓さんは平野を舞台にした講談を得意としていて、樋ノ尻口に残る幸村の話を題材にした「平野の地雷火」もその一つでした。
 内容は、家康を討ち取るべく幸村が樋ノ尻口の地蔵堂に地雷を仕掛けたものの、家康軍が来たのがちょうど昼時だったため、家康が近くの農家へ用を足しに行った時に地雷が爆発。家康はすんでのことで生き延びたというものです。爆発によりお地蔵さんの首が平野郷の中心、全興寺まで飛んでいったという言い伝えがあり、その首は今も祭られているそうです。
 塚原さんによると、信長、秀吉、家康は武将として有名ですが、町の人にとってはただの権力者であり、好ましくない存在だったかもしれない、とのこと。人と人とのつながりこそ、この町では一番大事、とも語ってくれました。
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■まち歩きツアー「大坂夏の陣〜決戦前日 幸村、家康の足跡をたずねて〜」
 開催日時:2011年1月22日(土)、午後1時30分〜
 参加費:500円
 申込:往復はがきに住所、氏名、年齢、性別、電話番号を書いて
      「大阪市平野区長吉出戸5-3-58、コミュニティプラザ平野、幸村・家康ウオーク係」へ。
 締切: 2010年12月28日(火)消印有効 *申込が30人を超えたら抽選
 問合せ:コミュニティプラザ平野へ 06−6704−1200