「なんでやねん」と漫才師の手つきをする楊さん

 アイセックは海外へのインターンシップ(就業体験)の応援をする国際組織で、日本ではNPO法人アイセック・ジャパンが活動しています。その会員組織であるアイセック・ジャパン大阪大学委員会は、2年前にこの番組に登場し、その活動ぶりなどを語ってくれました。今回は、中国から大阪の会社にインターンシップで来たいと希望する学生に対し、受け入れ企業を探したのはもちろん、新しい試みとして来日前に大阪弁講座を行ったことについて取材に応じてくれました。
 最初に、内田美穂さん(外国語学部3年)に現状を伺いました。それによると、アイセックは世界107の国と地域の1700以上の大学にネットワークを広げ、世界中で年間5500件以上のインターンシップ運営をしているそうです。大阪大学委員会は、海外から国内への受け入れが平均で年5人ぐらい、逆に日本から海外への送り出しは15〜20人ぐらい。受け入れは、中国とベトナムからが多いそうです。なお、インターンシップ生には、企業から滞在補助費が支払われますが、寮など住居が提供されない場合は15万円弱、提供される場合は8〜12万円ぐらいとのことです。
 今回、大阪弁講座を実施したのは、これまでのインターンシップ生から話を聞くと、日本で就業体験する際に壁となるのはやはり言葉であり、自国で日本語を勉強してきた学生でも苦労をするのに、独特のイントネーションを持つ大阪弁はさらに大変だとの悩みを抱えていることが分かったからだそうです。

大阪弁講座のテキスト

 楊碧イ(よう・へきい)さん(イは「偉」の人偏を王編に変えた漢字)は、中国の北部内モンゴルの出身で、湖南省長沙市の大学で日本語や日本文化を3年間にわたって学ぶうち、日本での就業体験を望み始めました。しかも、大阪出身の先生に学び、大阪弁こそあまり教えられなかったものの、大阪は人がいつも元気で、人と人との距離感がなくて友達ができやすいこと、さらには、将来、商売に関わる仕事を望む楊さんにとって、商業の町であるという情報を聞いたことで、日本に行くならぜひ大阪にという思いが強まったそうです。
 インターンシップの期間は今年9月16日から来年3月16日まで。仕事が忙しくて町に出かけるのは週末のみのため、まだまだ元気いっぱいの大阪人の姿をあまり見ておらず、もっと商店街を見て歩きたいとも。大阪弁については、実際に講座を受けるまではそれほど難しくないだろうと思っていたそうですが、実際に話してみると大変に難しいことが分かったそうです。

大阪弁講座を再現!

 楊さんに対する大阪弁講座を担当したのは、内田さんと同じタイ語学科の山田悠加(ゆか)さん(1年)。大阪弁講座は、テキストを郵送した上、スカイプと呼ばれるインターネットを利用した無料電話を通じて実施したそうです。取材の日、その様子をちょっと再現してくれました。
「『借りてもええ?』は大阪弁ですか」
山田「借りてもええか?は大阪弁です」
「いい?ではなく、ええ?を使いますか」
山田「若い人は使わないかも。借りてもいい?と言います」
 
楊さんにとって一番印象的な大阪弁は、「なんでやねん」だそうです。芸人のツッコミでよく使われるこの言葉、楊さん自身も使うことがあるそう。さすがに仕事では使うことはないものの、食事に行った際など、「なんでやねん」と冗談で言ってかなり受けたこともあるようです。なお、一番好きな大阪弁は「おおきに」。日本の生活では、日本人が魚をよく食べること、電車が時間通りに来ることに驚いたそうです。

楊さんは大変優秀だとのこと

 最後に、楊さんの受け入れ企業、株式会社エフカフェの取締役、高岡正人さんに伺いました。エフカフェは、インターネット通販の運営を支援するビジネスを展開、最近は中国でネット展開をしたいという日本企業からの相談が増えているそうです。これまで、国内からインターンシップ生を30人ほど受け入れてきましたが、中国に会社を設立したこともあり、初めての海外インターンシップ生を中国から受け入れることにしたそうです。楊さんには、通販サイトの運営に欠かせない中国語でのメールマガジン作りやバナー作り、データベースの処理などをお願いしているそうですが、その働きぶりは素晴らしく、当初心配していた言葉も全く問題なく、社員として成果を上げてもらっているそうです。
 彼女の使う大阪弁については、食事の時に「なんでやねん」と言ったりするが、ちょっと間が空いているためツッコミではなくボケになってしまい、思わず場を和ませるという。間を大切にする大阪人らしい分析をしてくれました。そして、外国から来ている人は共通語を話すが、大阪弁を使うことで場が和やかになり、いい職場が出来ていると感じる、ともお話いただきました。