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大塚さんと近藤さんにはさまれて |
「絵元」とは、
紙芝居画家に絵を描かせ、紙芝居師に絵を貸し出す紙芝居業者の中心的存在です。 現在、絵元として活動しているのは日本にただ一つ、大阪市西成区にある「紙芝居総合センター三邑(さんゆう)会」だけ。この三邑会が、所有する貴重な紙芝居の原画を公開し、21世紀の世界の子供たちに伝えていこうと開館したのが、塩崎おとぎ紙芝居博物館です。今回は、理事で、キャリア約30年の現役紙芝居師でもある、大塚珠代さんと近藤博昭さんを訪ね、貴重な紙芝居の原画を見せていただきながら、紙芝居についてお話を伺いました。
まず分かったのは、紙芝居は今やイベントなどだけで上演されるものとの思いこみが間違っていたということ。水あめを売りながら紙芝居をする街頭紙芝居は、現代の子供たちにも大人気だそうで、15人が所属する三邑会では、今も3人がそれを続けているそうです。大塚さんもその一人で、毎週水曜日、北天下茶屋公園に自転車で出向いて街頭紙芝居をしています。
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塩崎おとぎ紙芝居博物館の展示
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街頭紙芝居は呼び込みからスタート。拍子木を打って町を回り、紙芝居が来たことを知らせます。ただ、北天下茶屋公園の場合は水曜日に来ることが分かっているためほとんどその必要がなく、大塚さんが行くと30〜40人の子供たちが並んで待っているそうです。
最初にお菓子を販売。それから紙芝居を上演しますが、紙芝居は3部構成。これまでに5200巻が作られた「チョンちゃん」シリーズを上演、次に連載ものを上演して「この続きはまた来週」とひっぱり、最後にクイズを出題します。正解者には型抜きをプレゼント。その流れで再びお菓子の販売が始まるそうです。あくまで紙芝居とお菓子でワンセット、どちらもないと街頭紙芝居は成り立たないのだそうです。販売されるお菓子は水あめが中心で、型抜き(20円で販売しうまく抜けると30円のお菓子と交換できる)や水あめをはさんだミルクせんべい、天かすを乗せたたこせんべいなども人気だとのこと。
30年選手の大塚さんは、北天下茶屋公園で知られた存在。30年前に来てくれていた子供が成長して子を持ち、その子も来てくれるようになり、また、お父さんが昔見た紙芝居だよ、と言いつつ赤ちゃんを抱いて来てくれる人もいるそうです。
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チョンちゃんを演ずる大塚さん
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三邑会と塩崎おとぎ紙芝居博物館を作った塩崎源一郎さんは、2000年に他界。その後、館長は妻のゆうさんが引き継いでいて、保存されている紙芝居の数は2万巻以上。1巻は10枚の絵から成っているため、20万枚以上もの絵が存在しています。しかも、印刷ではなく、すべて絵師が手書きしてラッカー仕上げした原画ばかり。 手塚治虫の兄弟子にあたる酒井七馬、躍動する時代劇画の佐渡正史郎、美人画の山口正雄、日本画のくつな峰秀などの名画も数多く、文化遺産としても貴重です。ただ、街頭紙芝居を含めて現役で使われているため、世界でたった1枚しかない絵を紛失しては大変だと常に緊張感を持って接しているそうです。もちろん、傷みも気になるところ。「紙芝居も生き物、ええ年になってきたなあ、なんとかしてやらないとあかんなあ、という気持ちになる」とは近藤さん。複製、保存も考えなければならない課題のようです。
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プロが使う紙芝居に原稿はほとんどなし
その場の雰囲気でアドリブ上演
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この貴重な資料は、塩崎おとぎ紙芝居博物館の外でも公開されていて、例えば、大阪府立中之島図書館では今年も原画展を開催し、予想以上の好評を得たそうです。
図書館職員も、展示でこれほど大勢の人々が見に来ることは珍しいと驚いていたそうです。
紙芝居師になりたいという人も増えているそうですが、大事な絵を使っていただかなけらばならないため、これらの紙芝居を作った塩崎さんの精神をよく理解してもらった上で、仲間になってもらっているとのこと。生前、塩崎さんは「ふれあいの対話なくして平和なし」とよくおっしゃっていたそうで、希望者にもその精神で接し、紙芝居師を育成しているということでした。
塩崎おとぎ紙芝居博物館
■開館時間/毎月第4土曜日 13:00〜16:00
*曜日や時間帯については事前に相談
■入館料/大人500円、3才〜小学6年生100円
■問い合わせ先/072−751−7649
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