月刊島民

 フリーマガジン「月刊島民」は、大阪のど真ん中、中之島の情報誌。2008年10月の京阪中之島線開業を前に、注目度を高めて中之島にもっと来ていただき、また、中之島の人々にはより町に愛着を持っていただこうと、同年8月に創刊されました。しかし、誌面を見ると意外にもフリーマガジンから連想されるグルメ情報が少ないことに気付きます。編集担当の大迫力さんによると、中之島にはグルメやファッション、雑貨などの店がそんなになく、オフィスや公共施設が多い。また、江戸時代には蔵屋敷が並び、明治になると大阪のシンボルエリアとして市役所が出来たという歴史の蓄積がありるため、消費系より、そうしたものにフォーカスした方が中之島らしと考えたそうです。実際、この町で働いていると、石碑をよく見かけ、歴史に興味がわき、中央公会堂や日銀大阪支店などの近代名建築に目を奪われ、クラシックコンサートが盛んであることに気付くという。そうした生活実感を落とし込んで誌面づくりをしているのが、月刊島民なのだそうです。

中之島にある近代建築の代表選手
中央公会堂

 毎月1日発行で、現在は28号。創刊時25000部だった発行部数も3500部に増えました。記事には連載ものも多く、中之島の知られざる秘密を探る「ナカノシマニア」や、中之島でファッションチェックをする「中之島コレクション」といったユニークなシリーズもあり、創刊号では、数多いビルのガードマンのユニフォームを取り上げ、幻の名企画との評価も。また、医師で小説家の久坂部羊(くさかべよう)さんのコラムんも大人気だそうです。そんなマニアックな記事が受ける一方、天神祭や秋の大阪フィルによる野外コンサートなど、季節の行事に絡んだ記事も評判がよく、地域のコミュニティ誌としての役割も果たしているようです。
 特徴の一つは、バックナンバーを求める読者がとても多いこと。初めて読んだ人が創刊号からそろえておきたいと問い合わせてきたり、人に配りたいので全号を2冊ずつ求めてきたりするそうです。あまりに希望者が多いので、保存場所の確保や手間の問題でバックナンバーに限り1冊100円いただき、しかも、発送はしていないため訪問販売ならぬ「訪問され販売」であるにもかかわらず、編集部を訪れる人が後を絶たないとのこと。中には、昔話を一くさり語って帰る人もいるそうです。

「平成天の川伝説」開催時の
中之島公園(2010.7.7)

 月刊島民では、フリーマガジンの発行にとどまらず、読者の知的好奇心を満たすため、「ナカノシマ大学」を昨年10月に開講しました。10月1日のキックオフセミナーでは、鷲田清一大阪大学総長、内田樹神戸女学院大学教授、浄土心中本願寺派の釈鉄宗住職、平松邦夫大阪市長による、 「21世紀は街場に学べ」と題する教育に関するトークセッションを実施。以後、歴史や浮世絵をテーマにした講座、落語会などを月に1度開催しています。
 2年目となる今年11月は、15日(月)に橋爪紳也大阪府立大学教授をコーディネーターに迎え、「京阪沿線文化サミットin中之島」を追手門学院大阪城スクエアで開催。また、12月は7日(火)に開催される「ウイスキーがお好きでしょ?」と題したテイスティング付のウイスキー講座。その会場が歴史的建造物である中央電気倶楽部の大食堂というのも魅力的です。

写真とプリント社

 お話を伺った後、大迫さんに中之島の穴場に連れて行っていただきました。お邪魔したのは、土佐堀川・常安橋南詰のビルにある「株式会社写真とプリント社」。室内は真っ白で、一見、カフェのような店舗。実は写真スタジオと写真の現像所でした。代表取締役の松川祥広さんによると、自然光が入るスタジオ兼現像所がしたいと思い、天満橋から川沿いに物件を探していたらここが見つかり、たっぷり入る自然光が一番生かせるスタジオにしたかったので白を基調にしたとのこと。開業して約2年、店舗の可愛らしさからか、現像を出しにきてくれる7割が女性だとか。
 大迫さんによると、中之島でも、見るからに高価なカメラをぶら下げたおじさんはもちろん、写真好きな若い女性がカメラを持ってよく歩いているのを見かけるという。川があり、橋がある風景は、つい撮りたくなるのではないかとのこと。ただ、気になるのはデジカメで撮る人が多いこと。松川さんは、せっかく撮った作品をパソコンの中に眠らせている人が多いので、ぜひそれもプリントしにデータを持ってきてほしいと言います。

土佐堀川を借景にする松川さんの職場

 ただし、やはり松川さんのお薦めはフィルムでの撮影。撮影時にいいのが撮れたぞと思う高揚感、現像して実際にいい作品が撮れた時の喜び、そして、手に取って作品を見られる迫力に魅せられる人が増えているという。川を眺めながら、現像できた作品をずっと見ているお客さんもいるそうです。次に、また1枚1枚こだわった撮影ができるのではないかとのことでした。
 写真とプリント社には、フォトグラファーの平野愛さんがいて、お客さんと京都や奈良などへ撮影ツアーにも行っているとのこと。現像された写真は参加者が手作りのアルバムに仕立てて、参加者同士が交流も深めているそうです。

■月刊島民:京阪主要駅、大阪市北区・中央区の主要書店などで配布