前回の様子
写真提供: せんば鎮守の杜芸術祭実行委員会

 10月9日(土)、大阪市中央区のビルの谷間にあるパワースポット「坐摩(いかすり)神社」で、オペラを上演する「せんば鎮守の杜芸術祭」が開催されます。2005年から始まったこのイベントについて、 せんば鎮守の杜芸術祭実行委員会・実行委員長の佐久本昇さんにお話を伺いました。
 全体は2部構成で、第1部は「えん結び」をテーマに、音楽団体や文化団体が歌や演奏、詩吟、踊りなどを披露。大阪はもちろん、各地から来た皆さんが出演し、船場で「縁結び」をします。ステージに上がる皆さんも、大阪市立子ども文化センター所属のブラスバンド、笑福亭学光さん率いる阿波踊りチーム、ソプラノ歌手の元村亜美さん(大阪出身で東京にて活躍中)など、さまざまです。午後1時〜4時30分、無料。
  一方、第2部は「オペラの泉」と題し、5人のソリストが出演。難しいオペラそのものではなく、抜粋やアリアを中心に上演。前半はオペラの名曲の抜粋と「 「トゥーランドット」 などおなじみのアリアが楽しめ、後半は「夕鶴」や、ヒット曲「千の風になって」など、日本歌曲がたんのうできます。午後6時〜、2000円。
  また、花外楼が提供する餅つき大会も行われ、200食が振る舞われます。午前10時〜。

前回の様子
写真提供: せんば鎮守の杜芸術祭実行委員会

 製薬会社に勤務していた佐久本さんは、大の音楽好き。船場で営むカフェにはピアノを置き、歌の会など文化活動を長年行ってきました。2004年、そんな活動をインターネットで知った脚本・演出家の片岡伸介さん(大阪出身で当時は東京で活躍中)jから、モーツアルトのオペラ、ドン・ジョバンニを時代劇でする“時代劇おぺら”を大阪で上演したいと相談を持ちかけられました。佐久本さんは同級生などに声を掛け、自らが実行委員会を結成。これが芸術祭への道の始まりとなりました。
 当時は船場が一番沈んでいた時期、着物姿でドン・ジョバンニを上演するという雅な文化で船場が潤えばと佐久本さんは考えたそうです。会場は、片岡さんと2人で船場を回り、ど真ん中に位置する坐摩神社がまさにオペラにぴったりだと感じ、ここでの上演を即座に決意。運営面では、当初、難しいさもあったそうですが、昔の船場の活気を懐かしむ人々の協力が徐々に得られ、実現へと結びついたのだそうです。

坐摩神社社殿

 坐摩神社では、以前よりライブやインド舞踊などの奉納行事が行われ、夏祭りでは独自にジャズライブを開催してきており、音楽や芸術に造詣の深い氏子が多く、オペラ上演を持ちかけられた渡邉紘一宮司も快諾したそうです。
 そんな坐摩神社について、渡邉宮司に教えていただきました。坐摩(いかすり)とは、ここに祭られている五神の総称で、神社の通称としては「ざまじんじゃ」と呼ばれ、宮司自身もそう案内することが多いという。起源は、神功(じんぐう)皇后が新羅より帰還した際、渡辺津(現在の中央区石町)に神様を祭ったことにあり、大阪城築城時に現在の場所に移されました。おそらく、大阪城の外堀より内側に位置していたのだろうとのこと。なお、天王寺区の生國魂神社、中央区の北御堂や南御堂も、同じ時期に現在の場所へと移されたそうです。

近所のOLが境内でランチ

 興味深いのは、渡辺の町名も一緒に移された点。1989年まで、神社の境内地だけ大阪市東区渡辺町でした。しかし、南区と合併する際に全国で5番目に多い渡辺姓発祥地でもある渡辺の町名を残すべきとの声が高まり、現在は中央区久太郎町4丁目渡辺3号という非常に珍しい町名となっています。なお、渡邉宮司は58代宮司で、先祖は源氏へとつながる家系だそうです。
 坐摩神社は、鎮座する五神のうち、二柱が土地に関する神様、三柱が水に関する神様。住居の守護、旅行安全、安産(神功皇后が懐妊中に祈願したため)の神様として信仰を集めています。特徴は、なんと言っても都心にある点。地下鉄本町駅南西、御堂筋の1筋東にあり、伊藤忠商事本社をはじめとするビルに囲まれています。信仰の場であると同時に周辺で働く皆さんにとっては憩いの場にも。初詣も、三が日は人出が少なく、「4日からが始まり」なのだそうです。