えきペディアにアクセスする藤原宏美

 近年、駅などでバリアフリー化が進んでいて、車いすやベビーカーの利用者、高齢者などが外出しやすくなりました。しかし、せっかくバリアフリー施設が整っていても、案内サインが分かりにくいと利用が進みません。公共交通の案内サインのプロである岡田光生さんは、そうしたことを訴えると自らのビジネスのためにしているのではと色メガネで見られてしまうもどかしさから、2005年に「NPO法人まちの案内推進ネット」をつくって理事長に就任、非営利での活動を始めました。
 最初に手がけたのは「外出と交通の案内について」のアンケート調査。大阪の地下鉄はバリアフリー化がよく進んでいるにもかかわらず、高齢者や障害者がホームから出られずにうろうろしている姿をよく見かけたからです。この調査は、外出する際、事前の情報収集や現地での案内サインのあり方など、利用者にとって何が問題かを調べるもの。これまでほとんど試みてこられなかった身体障害の違いや加齢による外出時の不安、不便についての分析を行うことによって、ユニバーサルデザインやバリアフリー整備の際に注意すべき新たな視点や知見を得ることを念頭においた内容でした。有効回収数も2059票(障害者・介助者1042名、非障害者1002名)にのぼりました。

お話を伺った岡田光生理事長

 調査の結果、バリアフリートイレや乗り換えのためのエレベーターを探して迷うのは、高齢者や障害者に付き添いや介助をしている健常者に多いことが判明。そして、事前にウェブサイトや印刷物で情報収集がうまくできる環境を整える必要性が感じられました。
 さらに岡田さんは、大阪と東京、あるいは同じ大阪であっても、鉄道会社ごとに案内の仕方が違い、初めてその町に来た人にとっては移動していくごとに違う流儀の表示を見ることになって分かりにくいことや、階段の情報が妙に丁寧に書いてあるなど、バリアフリー施設を探す人にとって無駄な情報が溢れているケースがあることも問題だと指摘。
 そこで、まちの案内推進ネットは、駅の構内図を分かりやすくシンプルに提供するウェブサイト「えきペディア」を無料公開しました。事業者と行政、運輸局の協力を求めながら、バリアフリー情報の提供・維持・更新を市民参加型で目指す試みです。2006年、検討モデルとして大阪地下鉄を対象に情報提供の運用を開始、2008年4月には国内地下鉄を網羅しました。

えきペディアを使って駅利用

             

 えきペディアで表示されている「らくらくマップ」は、シンプルなデザインにもかかわらず立体的で各階が一目瞭然、エレベーターの位置も大変分かりやすく表示されています。また、マップに加えてバリアフリー施設の写真を市民参加型で掲載しています。トイレやエレベーターの入り口の様子が事前に分かると、出かける人にとっては非常に有利。例えば、地下駅へと降りるエレベーターが民間のビルに併設されている所では、マップ情報だけでは探しにくく、実際の入り口を写真で見ておけば現地でスムースに見つけることができます。ある利用者からは、いつも使っているエレベーターより便利なエレベーターがあることをえきペディアで初めて知った、という声をいただいたそうです。
 なお、このえきペディアのノウハウを昨年5月にインテックス大阪で開催された「食博覧会・大阪」のホームページに提供したところ、障害者の来場者が増え、全体の入場者が前回の1.5倍、1万人増となったそうです。

バリアフリートイレもすぐ見つかりました

 こうした情報はB6サイズの印刷物にも収められ、大阪の地下鉄全133駅の情報を網羅した「地下鉄バリアフリーマップえきペディア大阪」として840円で販売中。大手書店とアマゾンで入手できます。また、そのダイジェスト版が、大阪市内4カ所の観光案内所で無料配布されています。

 ところで、この日、藤原宏美は出張を控えて大きなスーツケースを所持。近くの谷町六丁目駅を利用するにあたって、えきペディアの該当ページを岡田さんにプリントアウトしていただいて使ってみることにしました。
 まずはマップでエレベーターを探し、改札階へと到着。谷町線の階から長堀鶴見緑地線の階へと移動しようとしましたが、エレベーターがないことを発見。地上で最初からそちらに行かなければいけなかったのかもと後悔しはじめたとき、マップを見ると、いったん谷町線の改札に入ると長堀鶴見緑地線へと行ける連絡通路があることが分かり、それを使って無事に移動することができました。