レトロな商店街を小西さんと歩く藤原宏美

 今回ご紹介するのは、快道メーカーこと小西尉司(じょうじ)さん。ハイキング好きだった小西さんは、20数年前jからあちこちを歩くうち、市販のガイドでは満足できなくなり、自分の好きなところばかりを選んだ“小西流”ガイドを作ることを決意。1997年に「新高野快道」と題するガイドマップを作りました。「弘法大師が行き来した高野街道を今風に再現するとどうなるか」が出発点でしたが、調べてみると国道などに変わっている部分が多く、興味のわかない危険な道もいっぱいあることが分かりました。そこで、“小西流”のコースを作ることにし、安全に歩けて、休憩できるところが適所にあり、できたら2時間ごとにトイレがある、また、何日にも分けて歩くため駅からあまり離れない、といった条件のもと、「新高野快道」を編み上げました。
 ただ、宣伝する術のなかった当初3年間は、自宅に積み上げられたまま。しかし、日経新聞(東京)に取材を受け、全国版の文化面に紹介されたのをきっかけに大ブレーク。それ以後はマスコミにも注目され、1万部の注文を受けた温泉めぐりマップもあったそうです。また、2002年からはインターネットでもコースを紹介しています。

連続型商店街の北端はせんば心斎橋

 小西さんが提唱するのは「旅歩き」という概念。何日かかけて歩くロングコースばかりを開拓しています。最新のマップは、「なにわ快道100キロガイド」。大阪市内を歩く3コースをあわせた距離は100キロに及び、歩ききるには10日ほどかかり、これはもう散歩ではなく旅だと小西さんは言います。こうした旅歩きは達成感が大きく、特に歩くことに自信を失いかけている高齢者にはうってつけだそうです。なお、3コースは次の通り。
1.水都コース(24キロ)
地下鉄太子橋今市駅→淀川大橋→(大川に入って)中之島堂島大橋→(安治川)→阪神伝法駅→舞洲の新夕陽ケ丘
*淀川、大川を楽しめるリバーサイドコースで、24キロのうち20キロが川沿いや海沿い
2.山都コース(37キロ)
市内の六つの低山を巡るコース。鶴見新山(鶴見区)、茶臼山(天王寺区)、聖天山(阿倍野区)、昭和山(大正区)、天保山(港区)、新夕陽ヶ丘(此花区)
*どれも人工の山ばかりで、自然の山と違って出来た年代が分かるのが特徴。最も古いのは、おそらく古墳である聖天山で6世紀、最も新しいのは平成10年に出来た新夕陽ヶ丘。
3.商都コース(39キロ)
東淀川区の地下鉄井高野駅から堺市の蘇鉄山(一等三角点のある山では日本一低い7m)までを歩くコース。パリやニューヨークなら裏町まで詳しい旅行好きがいるのに、北新地や法善寺を知らない人は結構いると思い作成。 東淡路商店街から始まり、日本一長い商店街の天神橋筋商店街、日本一短い商店街として売っている肥後橋商店街、そして、小西さんが発見した連続型での日本一長い商店街を歩くコース。


新開筋中央商店街

 

 今回は商都コースのうち、天神橋筋商店街2600メートルの倍、5200メートルに及ぶ連続型商店街を小西さんと“旅歩き”しました。小西さんによると、商店街は安全に歩ける上、ショッピングも飲食も楽しめるとのこと。お奨めは、リュックサックにウオーキングシューズ姿。こんな人々の大群が商店街を歩いている姿はあまり見ないものの、どんどん歩ける上、買い物してもリュックに入れられて便利ということです。
 さて、スタートは地下鉄本町駅すぐ近くの「せんば心斎橋商店街」。心斎橋というと長堀通〜戎橋間をイメージしがちですが、江戸時代の古地図を見ると本町よりさらに北の土佐堀あたりまで心斎橋だったことが分かるそうです。ただ、同じ心斎橋でも繊維問屋の多いせんば心斎橋には、卸し系の店舗が多く、客層も微妙に違うことが感じられます。
  連続型商店街は、ここから、心斎橋筋商店街→道頓堀→千日前筋→道具屋筋→なんさん通→でんでんタウン→通天閣本通→ジャンジャン横丁へとつながっていきます。

レトロ商店街の向こうはマンション街

 小西さんの特にお薦めは、ジャンジャン横丁を抜けた後、動物園前1番街、2番街(飛田本通商店街)以降。昭和30年代の趣が残る商店街がずっと続きます。動物園前2番街に入り、50メートルほど行ったところを左に曲がると、そこに出現したのは「オーエス劇場」という大衆演劇の芝居小屋。レトロ感がたまりません。ちょうど次の公演との間で、役者さんたちが劇場前で呼び込みをしているところでした。
 オーエス劇場を通り過ぎ、高速道路の高架沿いに右に曲がると、マンション1階に2軒の映画館が。入館料は3本立で一般800円、シニア500円。ただし、「映画も昭和30年代の作品が流れていたりする」とは、小西さん。
 さらに進み、新開筋商店街、新開筋中央商店街などのレトロ商店街を抜けると、いきなり近代的なマンション街へ。待っていたのは「あべのマルシェ」という再開発地区の商店街でした。タイムスリップしたかのようなこの感覚は大阪ならではかもしれません。

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