K2ファクトリーは
健司さんと香織さんの頭文字から命名

  関西下町探索会“K2ファクトリー”は、横田健司さん香織さんご夫妻主宰の待ち歩きチームで、一般的な歴史解説よりも町、とくに下町を楽しむ“町遊び”を重視しています。
 大阪生まれのご主人・健司さんは、16歳の時、ラジオ大阪「ぬかるみの世界」で計画された新世界ツアー(多数集まりすぎたため中止に)で新世界を自分で歩いたのが町歩きの原点に。その後、バックパッカーとして世界50カ国以上を訪ね歩いたそうです。一方、奥さんの香織さんはアメリカ生まれの関東育ちで、やはりバックパッカーとして海外旅行を多数経験。初デートで未知の地である大阪を訪れ、しかも新世界や飛田新地などを健司さんに案内されて大阪に一目ぼれし、「この町でなら住みたい」と、結婚を決意したそうです。
 そんな二人が最初に企画した町歩きは、住道(大東市)にある有名餃子店に餃子を食べに行くミニツアー。地域密着型のフリーペーパーで参加者を募集し、5〜6人で楽しみました。その後、香織さんが子育てで多忙になって暫く休んでいましたが、最近、また活動を再開し、自転車で路地裏などを巡っては気になる場所をチェックしてオリジナルコースを設計しているそうです。

新世界にある大衆演劇の「浪速クラブ」

 再開したツアーとして、昨年6月、「秀吉・利休が愛した町・天下茶屋を巡るツアー」を実施。インターネットの無料サイトを利用して参加者を募集し、 天下茶屋跡や天神ノ森天満宮、「心中天の網島」のおさんをはじめたとした有名人のお墓がある安養寺、聖天坂商店街のレトロな駄菓子店、チンチン電車の駅にある地元人気喫茶「ルンバ」などを巡りました。
 近々、フリーペーパー「みなとQ」とのコラボ企画として、視界360度の「なみはや大橋」を歩いて渡る港区〜大正区のツアーを実施予定。また、今後は、自身のバックパッカー経験を生かし、海外からのバックパッカーをガイドブックに載っていない大阪の路地裏に案内するツアーも行いたいとのことです。
 こうした独自ツアーを実施するほか、「大阪あそ歩」の公認ガイドも務め、自身が企画したコースも提案、実施。現在は新世界と北堀江のコースを担当しています。町歩きは、年配の方が歴史を楽しむパターンをイメージしがちですが、2人が担当した新世界コースの参加者には20代の若い人も多く、気軽に町を楽しむことができたとのこと。若い人に自分たちの町をどんどん歩いてもらい、魅力を発見し、町に誇りを持ってもらいたいと香織さんは言います。


新世界稲荷神社のおみくじ


 お話を伺った後は町歩き。浪速区の新世界をスタートし、西成区へと向かいました。最初は「新世界稲荷神社」。周辺商店主の信仰を集めるこの神社の注目は、“筋肉質のキツネ”と石のおみくじ。
  石のおみくじというのは、 石灯ろうのようなところに石で出来たルーレットのような円盤があり、それを回してその日の運勢を占うもの。止まった時に示される番号が運勢で、その番号の内容は横の黒板に表示されています。この日、五番を引いた藤原宏美は、半吉と判定されました。

てんのじ村文化芸能保存会により
建てられた記念碑

    

 西成区に入り、難波利三さんの直木賞受賞作「てんのじ村」で一躍有名になった山王1〜2かいわいへ。昭和52(1977)年に建てられた記念碑があるこのエリアには、最盛期に300人ほどの芸人が住んでいて、芸人を斡旋する事務所も集中していたそうです。当時は電話が普及しておらず、朝、芸人が興業主と直接顔をあわせて仕事を得られるのがてんのじ村だったとのこと。人情に厚く、しかも便利なこともあって、芸人たちの町になったそうです。
 大御所と呼ばれる人たちも在住経験があり、中田ダイマル・ラケット、海原お浜・小浜、ミヤコ蝶々といった皆さんも住んでいたそうです。しかし、この町の顔はなんと言っても二代目平和ラッパで、あの独特の髪型を整髪しに通った理容店の建物も、まだ面影をとどめていました。