大阪の言葉や習慣などをまとめた巻物
道修町「菜食館 門」にて

 中央区道修町で喫茶店「菜食館 門」を経営する清水路子さんは、お客さんと話す中から、残しておきたい大阪弁を書きとめ、昭和50(1975)年ごろから巻物にまとめました。それがきっかけで、常連客と大阪弁について語り合う集まりが生まれ、昭和58年に「なにわことばのつどい」を結成しました。
 結成間もないころから兄に誘われ参加していた小阪啓敏さんは、兄の逝去とともに活動から離れていましたが、10年ほど前に清水さんから誘われ、言葉だけではなく、大阪のよき伝統を守ろうという「伝統を守る なにわの会」を作って活動を再開。現在は、初代会長の清水さんが顧問に、小阪さんが世話役代表を務めています。
 清水さんによると、以前は普通に使われていたものの、今ではほとんどきかなくなった大阪弁がたくさんあるとのこと。例えば、朝出かける際、家族が「行ってきます」と言えば、行ってらっしゃいではなく、「おはようお帰り」。ご飯を食べた後、「ごっつぉさんでした」と言われたら、「よろしゅうおあがり」と返す。今ではそんなふうに言う人は、「いやしません」と清水さん。

穏やかな口調で
美しい大阪弁を連発する清水さん

 幼児言葉も、「てんてん持ってたんたん行こか」=手ぬぐい持ってお風呂に行こうか、「まいまいこんこんしなはんな」=大人同士で会話が弾んでいる際に子供たちが座敷で飛び跳ねている時の注意、など大阪弁は豊富だったという。
 「なにわことばのつどい」では大阪弁をかるたにまとめたそうですが、「伝統を守る なにわの会」では、文字ではなく、音声で残すことを計画。ドラマ仕立てにしたシナリオも、ほぼ完成しているそうです。
 さて、ここで清水さんから大阪弁クイズ。「堺筋走った」が意味するところは?例えば、ぜんざいをいただきいて感想を聞かれた時、「堺筋走ってきた」と答えたら、それは「水くさい、砂糖が足らない」という意味だとのこと。昔、堺筋には砂糖問屋が並んでいたため、堺筋を走って通ってきて砂糖を買い忘れたのではないかというしゃれ言葉になっているそうです。ただし、他人行儀なという意味の水くさいには、この言葉は使わないとの解説も。


昭和一桁に松屋町で生まれ育った小阪さんは
船場に思い出がいっぱい

 「悪い言葉は良い言葉を滅ぼす」が持論の小阪さん。会の集まりでは、お互いに使っている大阪弁の間違いなどを指摘しあうとのこと。時には落語家も勉強のために参加し、一席後、アクセントなどの間違いをみんなで指摘することもあるそうです。 また、文字だと他の地方の人に意味が通じにくいのも大阪弁。例えば、「とうさん(とうちゃん)」は、伝統的な大阪弁では父親ではなく、娘さんのことを意味することなど、興味深いお話を聞かせてくれました。
 松屋町にあった江戸時代創業の薬屋に生まれ育った小阪さんは、船場の暮らしや習慣にも詳しく、雇っていた女中さんのことは、上から「お松っとん、お竹どん、お梅どん」と呼び、習い事もちゃんとさせるなど、娘同然に扱っていたそうです。
 そんな小阪さんが、もっとも大阪人気質を表している言葉としてあげるのは、「考えときまっさ」という言い回し。セールスに行ったさいにこのように言われ、やんわりと断られたと感じるのが大阪人、検討してくれるものだと喜んで帰るのが他地方の人だとのこと。
  また、女性が好きなものとして、「芝居、こんにゃく、いも、たこ、なんきん」という言葉も教えてくれました。


菜食館 門

    

 「伝統を守る なにわの会」は、原則として偶数月の第3土曜日、午後2時から4時まで例会を行っています。2010年4月の例会は17日。しかし、月によっては第3土曜日以外に開催することもあるため、事前に問い合わせが必要です。興味のある人なら、誰でも参加大歓迎。
 会場は、中央区道修町3丁目、喫茶店「菜食館 門」で、参加費は学生500円、一般1000円(ドリンク付)。
tel/  06−6231−8509(土日祝休)
fax/ 06−6231−3373(氏名と連絡先を書いて申し込み)