齋藤さん 藤原宏美 安川副理事長

 2010年3月14日(日)、大阪市中央区の松屋町筋商店街では、「第四回松屋町春の陣〜歩く五月人形〜」が開催されます。松屋町を彩る春のイベントとして徐々に定着してきたこの催しは若手経営者の集まりである松屋町スタイル研究会の発案で始まりました。今回は、会長の齋藤創太さんにお話を伺うとともに、松屋町で長年商売をしている皆さんに松屋町の魅力や楽しみ方などを伺いました。
  若狭屋紙商店・社長の齋藤(38)さんが、30〜40代の若手経営者仲間3名で始めた松屋町スタイル研究会は、あくまで松屋町筋商店街振興組合の中に存在する1グループ。松屋町は、経営者の高齢化と後継者問題、廃業によりマンションに建て替わって店舗が連続しなくなることによる商店街の活力減少、少子高齢化や住宅事情による節句人形や結納品市場の縮小、量販店での購入など流通形態変化などの問題を抱えています。齋藤さんたちが何かしないとまずいのではと思い立ったのは、そんな理由からでした。
  齋藤さんたちが目指しているのは、「人形のまち松屋町」の存在をしらない若い人が増えているので、まず知名度を上げること。町に来ていただいてからのことは、現在の段階では各店舗にお任せしようとのことです。

提供:松屋町スタイル研究会

 武者行列は、松屋町が春分の日明けにお客さんが増える傾向にあることから、販売時期の重なる五月人形にからめて思いつきました。地元のために一肌脱いだのは、カタヤマサイクル経営者子息の片山さん。片山さんは、甲冑をあつらえて城下町などを巡る「甲援隊」を結成するほどの歴史好き。松屋町に関わりがあるのは片山隊長だけですが、毎年、約20名の隊員が集まり、中には数百万円もする自前の甲冑を身につけて練り歩いてくれます。そして、協賛店の前では立ち止まり、店の人が「武運長久」と言うと、「エイエイオー!」と勝ちどきを返してくれるそうです。
 今年の武者行列は、午後2時に南大江公園で出陣式して出発、松屋町筋に出て南に下り、空堀商店街入り口で北転し、中央大通との交差点(農人橋)の手前まで行き、また少し南に下って本陣(大阪商工信用金庫駐輪場)でに入ります。途中、松屋町交差点では地下鉄駅への通路を通りますが、武者行列がエスカレーターを利用するギャップが面白いため、人気撮影スポットとなっているそうです。行列は3時30分に終了し、4時からは本陣でかぶとの試着会が行われます。また、4ヶ所の人形店前では、「まち博」として、時代ごとに分けた甲冑の展示も行われます。

 松屋町筋商店街振興組合の安川悦司副理事長は、武者行列の話を聞いた際、「若い人が頑張ってくれるんだなあ」と感じ、実際に見た瞬間には、自らの甲冑好きの心に火が着いたようです。安川さんは、人形店「和幸」の社長ですが、この店の社員の皆さんも、毎年、この季節になると、店にある甲冑を一度は身に着けて楽しむとのこと。安川さんいわく、「これは男のさがでしょう」。
  安川さんは松屋町のことを「夢丼」と表現しています。おとぎの国がいっぱい詰まった町であり、乗り物、人形、お菓子、玩具など、すべての年齢の人に合わせた商品が揃っている町だとのことです。


熊野に並んだ五月人形

 お話の後は、松屋町歩き。まずは創業約100年という人形の熊野へ。3代目社長の熊野建介 さんに伺いました。熊野さんによると、五月人形は数万円から数百万円までさまざまあり、最もよく売れるのが10〜20万円のものとのこと。店内には、珍しい銀で作ったよろいもありました。
 上手な人形の買い方としては、購入したい人形の大きさと予算を決め、商品を絞った上で選ぶことがコツという。色々見すぎるとかえって分からなくなるため、欲しいものを伝えてお店の方に相談するのがいいそうです。もちろん、値引き交渉もOKとのことでした。


タニカトーイの谷社長

    

 人形店と並ぶ松屋町の名物といえば、玩具と駄菓子の店。今度は創業100年を超える有名店タニカトーイにお邪魔して、社長の谷澄夫さんに伺いました。ここの顧客は、最近はめっきり減ってしまった町の駄菓子店のほか、子ども会、幼稚園、文房具店など。また、家族連れの一般客も多いそうです。可能な商品はばら売りもしているとのこと。
 この日、谷さんが紹介してくれたのは、ブリキの玩具「ぽんぽん丸」。ストローで水を入れ、ろうそくに火を着けてそれを沸騰させ、蒸気の力で水上を進む手のひらサイズの蒸気船です。日本製だそうですが、作れる職人さんが減ってしまい、今では少しずつ限定生産を繰り返しています。


2階サテライトショップ(奥がティールーム)
             

 最後に訪れたのは、「味覚糖UHA館」。吉岡正樹さんにお話を伺いました。
 2階はUHA味覚糖のほぼ全商品が並ぶサテライトショップ。販売もしています。また、奥にはティールームがあり、1000円以上の商品を買うと、ドリンクが無料になるうれしいサービスもあります。しかも、ほっとコーヒーならお変わりも自由。最も歴史のあるバターボールから最新のものまで、ずらりと並ぶ商品から好きなものが選べます。吉岡さんは、「ぷっちょ」が一番お好きとのことでした。
 なお、このビルはUHA味覚糖の本社ビルで、7〜9階にはイベントホールや研修ホール、多目的ホールがあり、有料で貸し出しを行っています。

 

ロビーにあるオブジェ

 ところで、こちらのもうひとつの注目はショールーム隣のロビーに並ぶオブジェと、1階にある高級チョコレートショップ。
 まず、ロビーに並ぶ童子や太陽、犬の芸術作品は、せんとくんをデザインした藪内佐斗司氏の手になるもの。誰でも入れるスペースで
、座ってほっと一息ついている横に有名芸術家の作品があるという贅沢さが味わえます。
 一方、1階のチョコレートショップ「cagi de reves(キャギ・ド・レーブ)」は、路地裏の宝石店をイメージして、大地真央さんの夫・森田恭通氏がデザイン。商品は、マダガスカル産のカカオ100%のチョコレート。こういうチョコレートを製造しているのは全国に数社しかなく、UHA味覚糖自慢の逸品が並ぶ松屋町の新しい顔です。